EV車は寒さに弱い?ノルウェーに見るEV推進の背景② | 特殊車両ならトノックス
電気自動車(EV)は冬の寒さに弱いとされています。しかし寒冷地である北欧ノルウェーでのEV普及率は、世界で最も高い80%以上です。
ところが、最近のノルウェーでは少し事情が変わってきているようなのです。では、現在のノルウェーのEV事情の実態はどのようなものとなっているでしょうか。
1.EVを推進してきたノルウェーの現在
前回の記事「EV車は寒さに弱い?ノルウェーに見るFE推進の背景①」でお伝えした通り、ノルウェーはEVを強力に推進してきました。その結果ノルウェー国内では9割近い普及率となっています。
そのノルウェーで、実は最近ハイブリッドに力を入れてきた日本メーカーの車が飛ぶように売れています。そのメーカーはEVに弱気と言われ、非難までされて来ました。一体何が起きているのでしょうか。
ノルウェーでは確かにクリーンエネルギーが使われていますが、その反面で自国の資金とするため(外貨獲得のため)に二酸化炭素の素である石油と天然ガスを他国に売っているという矛盾があります。
また、国内でEV普及を強力に推進しているものの、EVのためのインフラ整備に腰が重いところがあると住民に指摘されています。
休日になると給電ステーションは激しく混み合い、長い時間列に並ぶフラストレーションが問題となっているようです。
さらにアスファルトとタイヤの摩擦問題が起きています。ガソリン車より重量のあるEVで、タイヤとアスファルトとの摩擦で微小粒子が発生し、オスロでは健康に悪影響を与える水準まで上昇しているのだそうです。
さらに寒冷地には雪がつきものですが、EVの強みでもある半自動運転の「オートパイロット」を使おうとすると、カメラなどのセンサーに雪が付着してしまうので、雪を取り除くか手動運転の必要があります。
ボンネットには熱が生じないため、積もった雪が溶けにくいという点にも注意が必要でしょう。
2.高騰する電気代と日本産自動車の人気
世界的に電気が不足して来ている現状でもあり、電気代も上がって来ていますから、これまでガソリン車よりもランニングコストが安いと言われてきたことも怪しくなって来ています。
もちろん電気自体の値段だけでなく、充電ステーションの設置・維持管理にも大量のコストがかかります。
また、ノルウェー国内でも快適にEVに乗れるのは発電施設が集中している北部のみで、南部に送電できないために、南部では国外から電気を購入しています。
そのため、ウクライナ危機や水力発電の元となるべき雨量の不足などが影響し、電気代が高騰しているとのことで、今や電気代はガソリン価格以上となっているのです。追記するとノルウェーのガソリン価格は元々EUの中でもトップクラスの高さです(ガソリンを外貨にするため、国内のガソリン価格を高く設定し、クリーンエネルギーを多く使うようにしているため)。
現在オスロではEVフル充電するのに100ユーロ(約1万4000円)もかかるのです。
ノルウェーは寒冷地ですので、冬は当然電力需要が高まりますから、一般家庭での電気代が、ひと月に12〜13万円も必要になっているそうです。一定額以上は政府が負担してくれるとのことですが、あまりの電気代高騰に、元々「EVの方が安いから」という理由でEVシフトしたオスロ市民は困惑しているとのことです。
そして日本の自動車産業調査会社の発表によると、2023年10月ノルウェーにおける新車販売台数が公表されており、日本のメーカーがそれまで支持されてきたEV路線の海外メーカーを抜いて一位となっています。
このことから、EV一本化を強力に進めるのに必要な事項が明らかになり、同時にガソリン車の利便性も浮き彫りになりました。
3.日本の寒冷地にEVは普及するか?
近年では低温でも性能低下が抑えられたバッテリーが開発されつつあり、EVへの搭載も始まりつつあります。
北海道をはじめとする寒冷地での普及を目指して、経済産業省などでも取り組みもされています。
一方、雪道走行には四輪駆動が好まれてきましたが、EVに四輪駆動モデルはありません。しかしながら、トラクションコントロール(TCL)やアンチロックブレーキシステム(ABS)がEVには標準装備されており、安定した走行性能は実現しているとも言われています。
日本では中東への石油依存率が80%以上にのぼります。現在まで石油の安定供給が様々な努力で続いてきましたが、これはいつ破綻するとも限りません。
EV先進国の例にもよく学び、国も企業も様々な観点で議論しつつ、進めていくことが求められそうです。