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EV車は寒さに弱い?ノルウェーに見るEV推進の背景① | 特殊車両ならトノックス

電気自動車(EV)は冬の寒さに弱いとされています。しかし寒冷地である北欧ノルウェーでのEV普及率は、世界で最も高い80%以上です。
では一体EV車が寒さに弱いとされる理由とはどのようなものなのでしょうか。そして、ノルウェーのEV事情はどのようなものなのでしょうか。


1.寒冷地でEVに起きること

気温が極端に下がったとき、EVバッテリーの充電性能は下がり、放電時に得られる電力が通常よりも少なくなってしまうので、そのままでは充電が遅くなるうえ、航続距離は短くなり、バッテリーの劣化にもつながるとされています。
これを避けるためには、バッテリー自体を冷やさないようにあたためる工夫が必要になります。また、社内の暖房に使うヒーターも必要です。

エンジン車の場合、燃料を燃やしたときに発生する熱を暖房に使うことはできないため、EVの場合は走行していない場合でも電力を消費する可能性があり、走行中は暖房にも電力を使うことになります。

また、車種にもよりますが霜の付いたフロントガラスを温めたりする機能があれば、もちろんこれも電気を消費します。
充電の際に氷点下以下ですと、バッテリーを温めるためのヒーターへの充電が最優先されるため、走行用のバッテリーが充電されていないと言ったこともあるようです。


寒冷地に雪はつきもの 〜電気自動車の充電ステーション〜寒冷地に雪はつきもの 〜電気自動車の充電ステーション〜



さらに寒冷地には雪がつきものですが、EVの強みでもある半自動運転の「オートパイロット」を使おうとすると、カメラなどのセンサーに雪が付着してしまうので、雪を取り除くか手動運転の必要があります。
ボンネットには熱が生じないため、積もった雪が溶けにくいという点にも注意が必要でしょう。

2.ノルウェーが世界一のEV普及率である理由

ではなぜ、北欧のノルウェーでEVが普及しているのでしょうか。
日本の豪雪地帯でEV車が立ち往生することがしばしば起きていることを思うと、北欧という土地でEVが使われていることに驚くことと思います。

ノルウェーはスカンジナビア半島のもっとも西側に位置し、人口約543万人、国土は日本よりわずかに大きい約38万5000平方キロメートルの国です。
ノルウェーでは新車販売状況において、2021年に販売された新車のうち、およそ65%がEVとなっており、PHEVも含めるとその比率は86%にまで跳ね上がります。HVを含む内燃機関車は、わずか14%程度にとどまります。

販売比率がここまで高い理由は、政府による強力な後押しがあるためです。
ガソリン車に比べてEVに対しては、輸入関税や購入時の付加価値税が免税となるため、内燃機関自動車よりむしろ安価に購入できるのです。

さらに充電器の整備も進んでいます。
現在、ノルウェーでは約19000か所の充電器が自治体などに設置されています。人口比で見ると、日本の20倍近くに及ぶ数です。充電インフラが充実しているので、バッテリー切れの心配が国内ではほぼないのです。
さらにEV専用車線やEV専用駐車場などが整備されており、EVは優遇されているというわけです。

さらにもう一つ。
ノルウェーでは一般的なガソリン車にもヒーターが搭載されています。
寒さでエンジンオイルが固まるのを防ぐためで、外部のコンセントから電源を引いて使用しますから、ノルウェーの一般家庭の多くは、車庫に200ボルト以上のコンセントが設置されています。
つまり、その高電圧のコンセントをそのままEVの充電につなげることが出来たということですから、EVシフトのハードルが他より低かった可能性があります。


3.雪国のノルウェーがEVを推進する理由

次に、ノルウェーがEVを推進する理由につても探ってみましょう。

2022年の時点でノルウェーは世界12位の石油輸出国で、天然ガスにおいては世界8位の産出国です。アルミニウムの精製など、電力を多く使う産業も豊かです。

それらを踏まえると、火力発電に頼ったエネルギー政策も可能ですし、そのほうが良いと思うかもしれません。しかしノルウェーはそれらを外貨取得の方法にし、自分たちが使うエネルギーはほぼすべて再生可能エネルギーで賄っているのです。その電力自給率は非常に高いもので、内容は水力発電や風力発電、太陽光発電といった再生可能エネルギーとなります。
再生可能エネルギーの大部分を占める水力発電は、春から夏に貯水池に貯められた雪解け水を、降水量が少なく、電力消費量が多くなる冬に利用するという構造ですから、非常に効率的です。

もし化石エネルギーに依存して将来資源が枯渇してしまったなら、ノルウェーの国力は一気に危機となる可能性があります。ですからノルウェーは、早い段階から再生可能エネルギーでの自国電力供給に乗り出し、万が一の時にも対応できる道を選択したのでした。

これにより、自国で利用するのに十分な電力を再生可能エネルギーで賄えるようになり、同時に、貯めておけない電気をEVの普及により、車をバッテリーとして余剰電力を限りなく減らしているのです。