車のマット塗装とは?メリット・デメリットとお手入れ法 | 特殊車両ならトノックス
1.はじめに
車の塗装には一般的にメタリック塗装やパール塗装など様々ありますが、近年カスタムカーだけではなく高級外車などにも使用されているマット塗装に注目が集まってきています。
トノックスでは電着塗装を主に行なっておりますが、電着塗装の他にどのような塗装があるのかという論旨で、今回はマット塗装についてまとめていきます。
2.マット塗装とは
マット塗装とは、表面に細かな凹凸があり塗装表面を触るとザラザラとしているのが特徴で、前述のとおり凹凸があるために光が拡散し、艶のない重厚な雰囲気となります。
通常のクルマには艶がありますが、マット塗装は艶がないため、「艶消し塗装」とも呼ばれます。
基本的にはブラックが多く、通常の艶のあるブラックよりも重厚で存在感と迫力が出ます。
この独特の「ざらつき」が光沢を抑えているため、磨いてしまうと凹凸がなくなり光沢が現れてしまうこともあります。つまりお手入れ方法が通常と違い、特殊なのです。日頃のメンテナンスも重要となります。
3.電着塗装とマット塗装の違いとは
電着塗装は、電着塗料という専門の塗料が入った水の中に塗装したいものを入れて、電気を流すことで塗装を行う方法です。塗料は水性で、顔料と樹脂がくっついた状態で中に含まれており、この樹脂がプラスに帯電しているかマイナスに帯電しています。
塗装の効率が良いため、全自動化が可能で大量生産も可能なため、自動車の塗装によく使われる手法です。
塗装したいものに電気を流す必要があるため、プラスチックや木材などの電気を通さないものなどには使えないのが特徴。
「粉体塗装」というものも電着塗装と呼ばれることがありますが、こちらは「静電塗装」と呼ぶことが一般的です。
さて、電気を流す方向、つまり塗装したいものをプラスにするかマイナスにするかが変わります。
プラスにするのが「アニオン電着塗装」で、マイナスにするのが「カチオン電着塗装」です。
アニオン電着塗装とカチオン電着塗装は、塗膜と中和剤が前者が弱アルカリ性、後者が弱酸性と違うため、設備が異なります。
アニオン電着塗装ではポリブタエン系樹脂、カチオン電着塗装ではエポキシ系樹脂を析出させて塗膜とすることが一般的です。
自動車に使われるのはカチオン電着塗装となります。
電着塗装は主に下塗りに使われており、マットな質感を出すのは塗装の上塗り部分となりますので、用途が違うものとなります。
4.メリット
マット塗装にするメリットは、なんといってもその存在感です。
通常現在の車両は光沢の強いパール塗装が多く、安価な車両でもメタリック塗装です。
そうした車が列になっているときに艶のない車が混じると、変わった車だと認識するより先に、思わず目が行くものです。非常に目立つのですが上品で、一目で高級である、手のかけられた車であることを感じさせます。
派手なボディカラーは好みではないが、他の車と差別化したい場合にはマット塗装がおすすめです。
5.デメリット
マット塗装を維持するためには、手間暇と、それにかける時間などが必要です。
光沢を消すように塗装されているので、日々光沢が出ないように気を付ける必要があるのです。
塗装面を削らないように、洗車機は使えません。必ず手洗いです。
また、塗装面を紫外線から保護するためのクリア塗装が施されていないために、カラー塗装に紫外線はダイレクトに届くので、ダメージや汚れが蓄積されます。
凸凹した部分には汚れがたまりやすく、きれいな状態を維持するために、こまめな手洗い洗車が必要です。
マット塗装用の艶を抑えたクリアやボディーコーティングなどもありますが、比較的高価となるため、マット塗装の車を持つデメリットとなります。
6.マット塗装の天敵
マット塗装には水垢(スケール、雨染み)という天敵と、虫、鳥の糞という天敵が存在します。
軽い水垢であれば溶剤で除去することもできますが、約3カ月以上放置されますと、除去が難しくなります。
虫と鳥の糞は、付着していることに気づいた段階で「濡れたティッシュ」か「アルコールの含まれないウェットティッシュ」で取り除きましょう。
一般の塗装でもこの二つは天敵なのですが、研磨することが可能ですよね。ところがマット塗装は研磨すると独特の風合いが損なわれてしまいます。
ですから、もしこの天敵たちを除去しきれなくなってから何とかしようとすると、板金塗装となってしまうのです。
マット塗装の車には、アルコールの含まれていないウェットティッシュを必ず積んでおきましょう。
7.お手入れ方法
カーシャンプーは研磨剤が配合されている場合が多いので、なるべく水洗いをおすすめします。
水洗い後はすぐに柔らかい布で優しく拭き上げます。
仕上げのワックス使用はお勧めしません。
ワックスには艶だし効果があるので、マットな質感を損ねてしまいます。
どうしても水洗いだけでは落とせない汚れが付着した場合は、塗装にやさしい中性または弱酸性のカーシャンプーを使用しましょう。
コンパウンドなど研磨剤入りのものや、ワックス入りのものは塗装の表面にダメージを与え、凹凸を埋めてしまう恐れがあるため使用は避けてください。
また、マット塗装に摩擦は注意点となります。
洗車時のクロスやスポンジは必ず柔らかいものを選び、水分を含ませたうえで優しく撫でるようにするのが基本です。
洗車後はボディに水気を一切残さないつもりで、入念に拭き上げましょう。
水道水は蒸発するとミネラル分が残留して水染みになってしまいます。
また、雨水にもミネラル分が含まれているため、洗車後だけでなく雨天時の走行後も必ず拭き上げを行います。
そして、マット塗装の車は、屋内での保管を心がけましょう。
屋外に保管すると、雨・砂埃・花粉など様々なものが付着し、塗装の劣化も早まります。
最後に、マット塗装の車には表面にコーティング加工をすることをおすすめします。
凹凸のある塗装ですから、コーティング剤を均一に塗ることが難しく、万一コーティングに失敗してしまうと研磨ができない(質感を損ねてしまう)のですが、それは一般的なコーティングのお話です。
専用のガラスコーティングを実施している専門店が増えてきており、汚れや傷に対してしっかりガードをしてくれます。
8.まとめ
いかがでしたか。
マット塗装は趣味性が高く、手間はかかりますが、「他とは違うおしゃれな車」を持ちたいという方にはお勧めです。
以上、今回はマット塗装についてまとめてみました。