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EV車の火災リスクとは | 特殊車両ならトノックス

ガソリン車と違い、電気自動車(EV車)は巨大なリチウムバッテリーを搭載しています。そのため、EV車の火災にはガソリン車では想定できなかった重要な火災リスクがいくつか存在します。
今回はEV車の火災リスクについてまとめていきます。

1.自動車にも火災のリスクがある

自動車にも火災のリスクがあることは周知の事実だと思います。

たとえば風冷式の高級スポーツカーは、早く走ることでエンジンに風をあてて冷やすのですが、渋滞に巻き込まれるとエンジンが冷えず、しばしば燃えることがあります。

また、事故でエンジンが損傷した場合も、炎上することがあります。

EV車も例外ではありません。水にぬれると電気系統が損傷して発火することがありますし、軽い衝突事故でもバッテリーにダメージが与えられることがあり、発火リスクがあります。

日中の高速道路の交通事故で燃えている車日中の高速道路の交通事故で燃えている車


2.火災時のEV車

冒頭でも述べましたが、EV車は巨大なリチウム電池を載せています。これが火災時に重大なリスクとなります。EV車の火災原因のひとつに、リチウムイオン電池が「熱暴走」を起こすことが挙げられます。

事故などで損傷が起きるとショートを起こし、発熱。するとさらに別のバッテリーにも熱が伝わることで、「熱暴走」の状態となります。熱暴走によって過熱と過圧力のサイクルが引き起こされた場合、火が消えていても自己発熱が続き、火災や爆発を起こすのです。そのため、EV火災の消火には大量の水で長時間の放水が必要となってしまうことが問題となっています。

実際に消火後5日も経ってから再発火した例がありますし、米国のカリフォルニア州で起きた衝突事故では、火災発生後約50分で消火したものの、1時間後に再発火、さらにこれも消火後約45分後に再々発火した例もあります。
後者のカリフォルニア州での火災には、約7万6000リットルもの水が使用されたとのことで、通常の自動車火災には数千リットルの放水で消火されることもあり、EV車火災の消火がいかに難しいかを物語っています。


3.予期せぬ場所でのEV車の火災

EV車の火事は、EV車を運搬する貨物船でも起きることがあります。また、オランダでは展示中のEV車両が燃える事故があり、この時は水が入った大型の水槽に車を24時間水没させて再発火を防いだとのことです。

一般的なガソリン車は「酸素供給を断つことが有効」といわれていますが、リチウムイオン電池の場合はそうではありません。リチウムイオン電池は一度発熱すると、電極の活物質が熱分解して自ら酸素を放出するからです。その上バッテリーは車の下部に配置されているため、放水しても確実に位置をとらえて消火・冷却できません。

このことからも、EVが燃えたら確実に消火できるのは「車ごと水槽に沈める」という方法が結論付けられていますが、最近では何もしないで燃え尽きるまで放置するのが良いという説もアメリカで出ています。


4.EV車の火災を防ぐためにできること

事故に遭ったり、浸水が起きたりした場合、水の中を走行してしまった場合などには、自力で運転しようとせずディーラーまでレッカー移動し、点検をしてもらうのが良いでしょう。車が乾いたように見えても、中にたまった水でバッテリーがショートする可能性があります。そうなると、発火する恐れがあります。洪水などで浸水した後、「動くだろうか」と確かめるためにEV車を走らせるのは火災のリスクがある行為なのです。

さらに前述の通り、衝突によるダメージでバッテリーがショートすることもあります。

これは事故の大きさを問いません。ですから、事故をしたときはすぐに専門家に見てもらった方が良いのです。
また、万一火災が起きた場合は、消防士に車に関する情報をできるだけ提供することで、効率的に消火活動ができるとされています。なにより「EVである」ということを伝えることが大事でしょう。


5.EV車の火災件数

さてここまでEV車の火災リスクについてお伝えしてきましたが、ではガソリン車、ハイブリッド車と比べての火災件数はどのような数値かをまとめて行きます。

米国の自動車保険比較サイト「AutoinsuranceEZ.com」の調査によると、販売台数約10万台あたりの火災発生件数はHVが最も多く、EVが最も少なかったとしています。

集計データを作る際に利用したソースは、米国家運輸安全委員会、米運輸統計局、リコール情報サイト「Recaiis.gov」から自動車火災やリコールに関するデータを利用したとのことです。

これによると、販売台数約10万台あたりの火災発生件数は、HV(ハイブリッド車)が3474.5件、ガソリン車が1529.9件、EV車が23.1件で、単純な発生件数はガソリン車が19万9533件、HVが1万6051件、EV車が52件でした。

火災の危険性があるとして届け出られたリコールについても、EVはガソリン車に比べ少なかったそうです。
EVおよびHVの発火原因はいずれもバッテリーでしたが、ガソリン車の原因は多岐とのことです。


6.まとめ

日本でもだんだんと普及してきたEV車ですが、どのようなリスクや危険があるのかをしっかり知っておくと、より安全に生活に組み込んでいくことができます。

どのような最新技術を搭載していても、運転には危険が潜んでおり、ひとたび事故が起きると命に関わるのが自動車というものです。

それはガソリン車でもハイブリッド車でも、EV車でも変わりません。できる限り安全な利用を心がけたいですね。