電着塗装の歴史とメリット | 特殊車両ならトノックス
1.電着塗装とは
電着塗装は、英訳すると「Electrodeposition coating」や「Electro coating」などと呼ばれ、電気化学反応を利用した塗装法です。
水溶性塗料を入れたタンク(浴槽)の中に被塗物を浸し、これを陽極、または陰極として直流電気を流し、塗膜を形成、固定させる塗装方法です。
2.電着塗装の歴史
電着塗装の仕組みの元となる「電気泳動」と呼ばれる原理の歴史は古く、1809年にロシアの物理学者フェルディナンド・フリードリヒ・ロイス(Reuss)によって発見されたのが最初です。
電気泳動とは、荷電粒子あるいは分子が電場(電界)中を移動する現象のことです。
その後150年以上にわたって、この原理を利用した塗装技術の開発が各所で行われていましたが、塗料の水溶化技術がうまく行かず実用化には至りませんでした。
しかし1960年アメリカのフォード社が、60年代初頭より精力的な研究開発を行い、月産60万個にも及ぶホイール製造過程での実績を重ねた後、1963年同社ウィクソン工場において、世界で初めてリンカーン及びサンダーバードの下塗り工程でのアニオン電着塗装を自動車ボディーに実用化しました。
この成功は世界中で大きな話題となり、その後、電着塗装は急速に発展を遂げました。
日本においては、1964年(昭和39年)に東洋工業(現マツダ)でアニオン電着塗装が採用されたのを皮切りに、1970年には各自動車メーカーにおいて、ボディーの生産ラインのほぼ100%でアニオン電着塗装が採用されました。
電着塗装は電気製品や建材、スチール家具などにも広く用いられていますが、自動車のような複雑な構造物の塗装方法として最も適しており、電着塗装の進化は自動車塗装の変化とともに進化してきたと言っても過言ではありません。
戦後目覚ましい成長を遂げた日本の自動車産業は、1973年頃から北米や欧州へ本格的な輸出を開始しました。
しかし、輸送時の衝撃で発生する塗膜のキズから、貨物船中の高温多湿の条件下で「かさぶた状錆(別名ジャパニーズラスト)」が発生しクレームとなりました。
このクレームの解決ため、自動車メーカー・鋼板メーカー・塗料メーカーが共同で塗装技術の改良に努め、その結果、
1976年08月
塗装皮膜を緻密に付けられるリン酸亜鉛処理のフルディップ化(付着が多く、結晶粒も小さい)
1977年11月
アニオン電着に比べ、架橋密度が大きく、酸素分子を透過しにくいカチオン電着の採用
1978年頃
酸化物(錆)が安定している両面亜鉛メッキ鋼板の採用
と次々とクレームを解決するための改良を行い、ジャパニーズラストを解消していきました。これにより、1977年以降の自動車ボディーおよび自動車部品の電着塗装は「カチオン電着塗装」に切り替えられ、現在でも主流となっています。
一方の「アニオン電着塗装」もアルミニウム材の分野に用いるなど、必要に合わせて使い分けられています。
3.電着塗装のメリットとデメリット
車体の塗装を支える電着塗装には、どのようなメリットがあるのでしょうか?また、デメリットについても把握しておきましょう。
電着塗装のメリット
①膜厚が均一
電気化学反応を利用しているため、導電性の部分には均一に反応を起こさせることが出来ます。
②膜厚管理が容易
職人の技術に左右されず、一定の範囲内で厚さが調整可能です。
③塗料ロスの軽減
閉回路水洗システムは塗料中の水分(ろ液)を分離し、その水分を被塗物に付着した余分な塗料を落とすために再利用、余分な塗料が次の工程に持ち越される心配もありません。
落とされた塗料は引き続き利用出来るため、無駄も少なく効率的です。
④環境への影響
水性塗料であるため、火災の危険がなく、溶剤による大気汚染も少ないです。
⑤優れた防錆性
塗料の性質による高い「防錆性」・塗膜の高い「密着性」・袋部内側にも塗装可能な「つきまわり性」以上3点によって、優れた防錆性を実現しています。
電着塗装のデメリット
①設備の大型化
大型の付属設備を必要とし、空間の確保と設置のためのコストがかかります。
②被塗物は導電性のものに限られる
電着塗装の原理上、被塗物は導電性のあるもの(主に鉄などの金属)に限られます。
③厚膜化が難しい
被塗物表面での化学反応を利用した塗装であるため、ある程度の厚さになると反応が止まります。(約10~30マイクロメートルの厚さの範囲に限られる)
④紫外線劣化がある
紫外線のある波長において塗装表層部分が化学的に変化し、剥離などの劣化が起こります。
4.まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は様々な塗装方法ついてご紹介いたしました。
トノックスは、以前より電極塗装技術を用いて特装車を製造、その他に計測解析業務・レストアなども行なっている製造会社です。
個人のお客様のご相談から、国の行政機関・公共団体のご相談まで幅広く対応、多数の受注実績がございます。企画・設計から、製造・整備まですべて自社にてまかなえる一貫体制が整っています。
当社では昭和23年の創業より働く車、特殊車両の専門メーカーとして創業70周年を超え、多数のノウハウ・実績がございます。詳しい内容をご希望の方は、お気軽にトノックスまでお問い合わせください。
ご相談お待ちしております。