トノックスの変遷と事業拡大の実現⑥ | 特殊車両ならトノックス
1.これまでの振り返り
①〜⑤の記事では、計5回にわたってトノックスがどのようにして主力事業を転換させ、非関連分野への事業拡大を図ってきたか、具体的な事例を取り上げて述べてきました。今回は、なぜトノックスが事業の縮小と拡大を同時並行的に行い、事業転換に成功することができたか、大手企業の事業を譲受することによって資源や市場を獲得し事業転換を果たしたという状況の他に、成功の理由となった新規事業の拡大における論理的な視点や実務的な事例分析を織り交ぜながら、ご説明していきます。
2.企業家志向性の高さと好業績
新規事業に積極的に進出する企業に関して、近年EO(Entrepreneurial Orientation: アントレプレナーシップ=企業家志向性の意)と企業業績との関係を明らかにする研究が増えつつあります。EO の定義はさまざまですが、Lumpkin and Des(1996)では新規参入につながるプ ロセスや実践であり、意思決定活動のことだと認識されています(参考:Rauchi, et al., 2009)。
Lumpkin and Dess(1996)によると、EO は proactiveness(先を読んだ行動を取ること)・ innovativeness(イノベイティブネス=革新的であること)・risk-taking(リスクを負えること)・competitive aggressiveness(競争上の積極性)・autonomy(自主性)の5つの次元(dimensions)で 表されます。
EO の次元に関してはいくつかの議論がありますが、最初の3つの次元は Miller(1983)が起業家志向性の指標として挙げていたものです。
その後にEO の概念が生まれ、曖昧な EOの概念を説明するための要素としてMillerの3つの次元が取り上げられるようになりました。さらに、前途のLumpkin and Dess(1996)が新たに2つの次元を追加することにより、EO と企業業績との関連が研究されるようになってきました(参照:Rauch, et al., 2009)
3.ENTREPRENEURSHIP(アントレプレナーシップ)
日本では,Entrepreneurship(アントレプレナーシップ)という言葉が最初に「起業家 精神」と翻訳されたため、2つの誤解が生じているといいます。
一つは企業家と起業家が混同されていること。もう一つは「精神」と訳されたため個人の精神的な資質と考えられてしまい、本質を見失うほど狭義化されてしまっているということです。
確かに海外の研究では、例えば Lumpkin and Dess(1996)は「アントレプレナーシップと効果的な戦略経営(effective strategic management)は異なるものである」と いうことを議論したうえでEO の議論に移行しています。さらに EOは、企業の組織プロセ スや意思決定の手法を反映させたものとして、競争優位や戦略変革の源泉になり得ると説明されています(Lumpkin and Dess, 1996)。
そこでは、アントレプレナーシップについて企業の創業者や経営トップ の個人の資質や精神論ではなく、組織としてのプロセスや手法についての実践的な議論がなされています。
海外のアントレプレナーに関する研究は、Miller(1983)の段階からアンケート調査により定量化された実証研究が行われ、さらに、Rauch ら(2009)の研究では過去の 研究蓄積を集積してメタ分析なども行われるなど、この分野の研究は個別企業の詳細な定性分析よりも定量分析が行われる傾向にあります。そのため、具体的なアントレプレナー的行動様式や組織プロセスが見えにくいという特徴も見られます。
4.トノックスの企業家志向性の高さ
では、トノックスの事例を見てみましょう。
個別事例ではありますが、実際に EO を構成する3つの次元を実現していることがよく分かります。
まず、innovativeness(イノベイティブネス=革新的であること) につ いては、自社オリジナルの研究開発成果ではないものの、NIH 症候群(英:Not Invented Here syndrome=非発明元症候群の意。ある組織や国が別の組織や国、あるいは文化圏が発祥であることを理由にそのアイデアや製品を採用しない、あるいは採用したがらないこと。 また、その結果として既存のものとほぼ同一のものを自前で再開発すること。Katz and Allen, 1982)に陥ることなく事業継承によって新規技術を受け入れたことが大きいでしょう。
その技術が他に国内になく、またその社会的意義を見極め、技術面や社会的側面での迅速なキャッチアップや対応力に優れていたこと、すなわち革新性を持つ組織であったといえます。
次に、proactiveness(先を読んだ行動を取ること) については、例えば大型車両を塗装できるようなブースを導入するなど先を見越し、大型投資を行うなどの思い切った行動に、先見の明があらわれています。
3つ目の risk-taking(リスクを負えること)については、トノックスの企業規模および従業員構成からすれば、大手輸入販売会社や大手他社企業の事業を継承することはかなりリスクを伴うと判断されたであろうと予想できます。
これらの3つの次元を鑑みるだけでも、トノックスが高いレベルでアントレプレナー 的志向性を持つ企業であることが伺えます。また、他の2つの次元である competitive aggressiveness(競争上の積極性)・autonomy(自主性)についても見てみると、前者については判断しにくい部分があります。
なぜなら、計測技術などはレッドオーシャンというよりも競争相手のいない世界=ブルーオーシャンに参入したという方が正確だからです。一方、後者の自律性については、経営陣トップだけでなく「クイックレスポンス」で現場に近い従業員により情報やナレッジが迅速に共有されていることから、素早い意思決定が実際に行われるような自律性が高い環境であることが分かります。
5.まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は、トノックスの成功の理由となった新規事業の拡大について、EOの概念を元に、論理的な視点や実務的な事例分析を交えてご説明いたしました。
次回は、今回の後半で触れた企業家志向性の高さについてのトノックスの事例に加え、トノックスの具体的な行動とその本質的動機について触れたいと思います。
トノックスは、小型から大型まであらゆる特装車を開発・製造しております。その他、計測解析業務・レストアなど、個人のお客様のご相談から、国の行政機関・公共団体のご相談まで幅広く対応、多数の受注実績があり、企画・設計から、製造・整備まですべて自社にてまかなえる一貫体制が整っています。
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