トノックスの変遷と事業拡大の実現② | 特殊車両ならトノックス
1.事業の多角化とコア技術の強化
前回の記事では、株式会社トノックス(以下トノックス)の前身である殿内工業がどのように事業を拡大し、高度経済成長とともに順調に成長してきた歴史をご紹介いたしました。その後、時代の変化と共に自動車業界全体が厳しい状況に立たされた中、トノックスはどのような変革を図っていったのでしょうか?
トノックスが、現在のように事業の多角化に至った理由は大きく分けて2つ挙げられます。
第一に、外的環境の変化に適応して自社の強みを強化するため。第二に、ベストなタイミングでの事業譲受により、自社にはない技術を獲得するためです。
今回は、1つ目の理由として挙げた「自社の強みを強化する施策」として、大手自動車会社系のサプライヤーから系列以外の仕事を受注するようになった経緯をご紹介したいと思います。
2.多角化のきっかけと背景
これまで殿内工業(現トノックス)は、大手自動車会社と大手自動車系列会社の協力会社として量産型の経営を志向していました。しかし、主要取引先である大手自動車会社の先行きや国内自動車業界の将来を考えた際、このまま 一協力会社として量産を受注し続けるのか、主力事業の転換を図るべきなのか、2つの選択肢からどちらかを選択しなければならないとトノックスの経営陣は考え始めました。
そこで、当時の殿内社長は大手自動車会社系以外の仕事を積極的に受注する方針を固め、多角化への舵を切る決断を下しました。これをきっかけに、トノックスの営業スタイルは徐々に変化し、大手自動車会社系の量産受託を主軸としつ つも、特架車の関連分野を開拓するようになったのです。
例えば県警等は警察庁の公用車と同じ仕様の発注をするケースがあるため、殿内工業は各地の自治体に入札権を持つディーラーに対して営業を行い、警察車両の大口受注を増やしていきました。ここでは、国が発注した大手自動車会社の特架車を製造しているという実績が殿内工業(現トノックス)の信頼性を高め、全国のディーラ ーに安心感を与える結果となりました。
その後、同社はバン型保冷車・建設機械用キャビンの製造や、輸入車の出荷前納車点検整備、車検整備事業などを開始し、1991年には社名を現在の「株式会社トノックス」に改称しました。
さらに、 空港トーイングトラクター・高規格救急車・大型車両特殊車(医療車・消防車)・軌陸車の開発生産を始めるなど、事業の内容は多岐に渡るようになりました。時にはキャンピングカーを自作し、全国を巡る営業活動も行っていました。
3.特装技術の蓄積
このようにしてトノックスが持つ技術は年々多様化してきました。
現在、トノックスは単なるサプライヤー(供給する、提供する人)ではなく、アセンブラー(組み立てる人)である自動車メーカーと同程度の専門技術を持っているため、完成車両を自社内で製造することができるのです。車体を作るための、そのすべての知識と技術をもっているからです。
しかし、これらの技術を創業当初から持っていた訳ではありません。特装車製造の技術は、トノックスの既存技術では対応できないものでした。自動車メーカーからの注文に対応する努力によって、さまざまな生産工程を担うようになり技術を蓄積してきた結果なのです。
4.手板金加工からスタートした自動車事業
トノックスの事業は、昭和25年に板金工からスタートしました。いわゆる手板金というものです。手板金加工は、板金をハンマーなどで叩いて成型する手法で、少量生産・完全受注で行われます。流曲線のような複雑形状の生産が可能で、汎用性が高くプレス加工や精密板金では加工できない形状にも対応できるのが特徴です。
当時はプレスしても、自動車メーカーでさえ設計図どおりには作れなかったため、自動車の屋根を叩いて形を出すということもありました。自動車メーカーのオーダーに従って車体を製造しつつ、メーカーから技術を教わり勉強させてもらったといいます。
昭和40年頃になると、量産の自動車を自社でもある程度までは製造できると予測しました。そこで、トノックスは量産を見越し自社工場を大手自動車系列会社の隣接地に建設、生産技術は大手自動車会社や大手自動車系列会社から指導を受けました。
こうして自社で完成車の組み立てができるようになるまで技術力を向上させるとともに、メーカーからのオーダーに応じて次々と特装の技術を蓄積して行きました。
5.設備投資と好循環
その後、経営方針の変更に伴い、量産から非量産(オーダーメード)に幅広く対応するため、工場設備のスクラップ&ビルドが必要となりました。トノックスは量産用の設備はすべて解体、ダウンサイジングした設備を新たに導入しました。
これにより、それまで月産6,000台の 設備が月産1,000台の非量産型車両対応の設備へと変化しました。
このとき、導入する塗装ブースのサイズをどうするかが問題になりました。塗装ブースが大きいと塗装材料が多く必要になり経費がかかりますが、大型車に対応できます。逆にブースが小さければ材料費は少なくて済みますが、中型小型車にしか対応できません。
どちらを優先させるかの選択を迫られる状況でした。
結局、トノックスは大きい塗装ブースを導入し、これが後に大型車両にも対応できる ことへとつながりました。特に、欧米向けの輸出車両はサイズが大きく、最近は各メーカーで車体塗装業務が多くを占めています。そのため、多くのメーカーは試作車の塗装を外注するのですが、これを受注できる塗装設備を持つサプライヤーは国内に非常に少ないのです。
トノックスは、大手メーカーの試作車工場から比較的近距離で輸送コストが低いという立地の優位性も手伝って、塗装の受注が増えていきました。塗装ブース導入に際して先見の明を持っていた経営陣の判断が功を奏したと言えるでしょう。
6.まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は、トノックスの前身である殿内工業が、時代の変化によってもたらされる課題に対し、大胆な変革に挑戦していった様子をご紹介しました。
次回も、トノックスの成長や変遷についてご紹介していきたいと思います。
トノックスは、小型から大型まであらゆる特装車を開発・製造しております。その他、計測解析業務・レストアなど、個人のお客様のご相談から、国の行政機関・公共団体のご相談まで幅広く対応、多数の受注実績があり、企画・設計から、製造・整備まですべて自社にてまかなえる一貫体制が整っています。
当社では昭和23年の創業より働く車、特殊車両の専門メーカーとして創業70周年を超え、多数のノウハウ・実績がございます。詳しい内容をご希望の方は、お気軽にトノックスまでお問い合わせください。
ご相談お待ちしております。