ものづくりの現場から 〜日刊自動車新聞掲載記事より〜 | 特殊車両ならトノックス
1.ものづくり/テクノロジー
軽自動車から大型トラックまでの車体架装企業を展開するトノックス(殿内荘太郎社長、神奈川県平塚市)は効率的な人材活用に向けて多能工の育成を進めている。
数年かけて組み立てや溶接など架装に関する主要作業をじっくり習得してもらい、工場全体の技術力向上の底上げを図っている。
こうした取り組みによる技術力が評価され、防衛関連の車両架装を新たに受注するなど事業面でも成果が表れている。将来は、架装メーカーでは珍しい電着塗装設備を持つことを生かしてヴィンテージカーのレストア事業の本格展開も視野に入れる。
2.数年間かけ多能工を育成、工場全体の技術力底上げ
受託生産減から架装メインに転身
同社が多能工の育成を本格化したのは自動車メーカーからの受託生産台数の大幅な減少がきっかけだ。以前は日産車体から最大で月5千台の生産を受託していたものの、日産グループの国内生産体制の再編に伴って2011年には同500台にまで縮小した。この穴を埋めるためには、架装関係の事業拡大に突き進むしかなかった。ただ、人材が限られる中、きめ細やかなオーダーに合わせて車両をモデファイする架装を多数こなすには、さまざまな作業に対応する多能工を増やして柔軟な生産体制を実現することが必要と判断した。
多能工の育成では、まず組み立てや溶接、塗装、艤装など各スタッフに未経験だった作業スキルを1種類ずつ1年単位で習得してもらうことにした。一つ覚えたら次のジャンルというように経験を積み重ね、幅広い分野の作業をこなせるように養成。さらに、習熟過程で各スタッフの適性も判断し、配置を決めるようにした。こうした教育システムと人事管理体制によって「作業員一人ひとりの習熟度を高めるとともに、気持ち良く仕事ができる職場づくりにもつながった」(高野和博取締役)と、相乗効果も得られたという。
軽量化ニーズを見据えアルミ溶接へ
多能工を育成する一方で事業拡大に向けて市場のニーズに対し事業の幅を広げる。この一環で溶接では交番に加え、軽量化ニーズの高まりによって作業量の拡大が見込まれるアルミ溶接にも力を入れている。子会社のヤナセテック(殿内荘太郎社長、横浜市保土ヶ谷区)が、作業用多目的車のメルセデス・ベンツ「ウニモグ」の架装でアルミ溶接のノウハウを蓄積しており、その技術をトノックスに移管した。離れた場所にあったヤナセテックの工場を「少しずつ平塚へ集約」(殿内崇生常務)し、14年4月にはトノックスの平塚工場内にヤナセテックの架装事業の全面移管を完了し、アルミの溶接体制を整えた。
トノックスは移管完了と同時期、アルミ部材を大量に使用する防衛関連の大型案件の受注にも成功。これが受託生産台数の減少という経営危機を乗り越え、新たなステップを踏み出す最初のビジネスとなった。
「危機が逆に人材育成と企業体質強化のチャンスになった」(高野取締役)と振り返る。
3.電着塗装設備を活用し旧車レストアも
現在210人いる製造スタッフのうち、鉄、アルミ両方の溶接をこなすことができる人材を30人育てるなど、着々と多能工を増やしてきた。今後もさらに教育体制を拡充しながら、多能工の育成に取り組み、効率的な生産と作業員の活躍機会の拡大につなげていく。
さらに、殿内社長はヴィンテージカーのレストア事業にも意欲を示す。試作品づくりに使用する電着塗装設備を活用することでメーカーの生産ラインと同等レベルでレストア車両の防錆が可能になる。これらメリットを訴求してニーズを吸収していきたいという。架装メーカーならではの技術でフル・レストアが可能なことを周知する方針だ。
同社が受注生産していた日産の初代「シルビア」などの製造経験を生かし、入手困難な部品の製作にも取り組む計画だ。「自動車メーカーの協力工場として車両生産に携わってきた歴史を、レストアによって引き継いでいきたい」(高野取締役)と、ものづくりの伝統継承に対する意気込みも示す。
4.まとめ
この記事は、日刊自動車新聞2017年11月29日掲載記事より転載したものです。(我妻 昭徳氏著)
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